- HOME
- 医療情報
医療情報
輸入麻疹の発生増加に注意です
~麻疹風疹混合ワクチン1期・2期を速やかに済ませましょう~(2025.4.28)
国内の感染症等の情報分析・危機対応など行う国の専門機関(国立健康危機管理研究機構)が国内の麻疹発生増加に伴い注意喚起の声明を4月に出しています。ここ数年、海外との交流が年々多くなるに従い、訪日外国人や海外渡航者による輸入麻疹の発生報告が増加し、2025年度は3月19日時点ですでに昨年の年間報告数に迫っています。麻疹の発生は世界のどの地域でも認めていますが、特にベトナムをはじめ東南アジアの国々で報告数が多く、米国でも今年は発生数の増加が報告されています。
麻疹という病気は、感染力が非常に強く、治療法はなく時に肺炎や脳炎などを起こして命にかかわることがある病気です。現在の国内状況はいつ、身近に突発的に麻疹の発生が起きてもおかしくありません。そのため予防が最も重要です。
以下の点を確認しましょう。
- 1歳になったらすぐに麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)1期を接種しましょう。
万が一身近に麻疹が発生した場合、1歳未満でも緊急避難的に麻疹ワクチンの接種が可能です。医療機関にご相談ください。 - 就学前の年に通知が来る麻疹風疹混合ワクチン2期の通知が来たらすぐに接種しましょう。
- 麻疹の免疫を維持するには2回のワクチン接種が必要です。30歳代後半から40歳代の世代は麻疹ワクチンの定期接種の機会が1回のみであり、海外に行く場合には麻疹ワクチンの接種を検討してください。(もちろん海外渡航しなくても2回接種が望ましい)またそれ以下の世代の方も2回の定期接種が未完了である場合は接種が必要となり、過去の接種歴を確認しましょう。
- 海外から帰国後もし発熱した場合には出歩かず、医療機関受診前に予め海外からの帰国後である旨を伝えたうえで受診してください。麻疹は発症当初は発熱や感冒症状のみで通常の風邪と全く区別がつかず、この時期に周囲に感染を広げてしまいます。
百日咳の流行と予防について(2025.4.22)
百日咳が全国的に流行しています。国の機関からの報告によると2025.4月第1週の全国からの報告数は2018年以降では過去最高最多を更新しています。当院でも昨年末ごろから多くの百日咳患者を診断しています。
百日咳は赤ちゃんがかかると、息が止まったり、脳症や肺炎を起こして重症化しやすい病気で要注意ですが、学童や成人になってからでも、感染すると頑固な咳が数週間続いて大層つらい思いをすることがあります。発熱することはなく、最初は普通のカゼと全く区別はつかないため早くに診断するのがなかなか難しい病気です。最近当院で診断した人も多くは小中学生です。乳児期にワクチン接種して獲得した百日咳の免疫が小学生ごろから低下してくるため、この年代で感染する人が多くなることがわかっています。
百日咳に対しては予防が最も重要です。
- 赤ちゃんは2か月になったら百日咳ワクチンが含まれている5種混合ワクチンをすみやかに接種しましょう。
(乳児期前半はあまり人ごみに出ないように気を付けましょう)
*予防接種で免疫がつく前の赤ちゃんは百日咳に対して無防備なので、海外では妊婦にワクチンを打ってお母さんから移行する免疫で百日咳を予防することが推奨されています。今後国内でもこのような動きが出るかもしれません。
学童期に対しては日本小児科学会では百日咳予防の方法として以下のことを推奨しています。
- 就学前に3種混合ワクチンを接種する。
(MRワクチン2期の際に接種するのがおすすめです。) - また6年生の年に接種するジフテリア・破傷風(DT)の接種を
ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)に変更するのも一つの方法です。
*この場合DPT接種は自己負担が必要です。
参照
【保護者用】日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20241105_vaccine_schedule_hogosya.pdf
「乳児期のビタミンD欠乏に関する提言」について 日本小児科学会から乳児ビタミンD欠乏についての注意喚起(2025.4.14)
ビタミンDは人間の体に必須の栄養素で、食べ物からの摂取と太陽の光(紫外線)を浴びて皮膚で合成されて作られます。不足すると小児ではくる病や低カルシウム血症という病気の発症に直接関連します。
くる病は凹脚やX脚と言って足が変形する病気ですし、低カルシウム血症は痙攣を起こす病気です。それ以外にもビタミンDは体の免疫系や細胞の働きを調整する重要な働きを担っており、
早産や糖尿病、成人の癌や死亡率と関連がある事が分かってきました。また最近ではビタミンDの欠乏が食物アレルギーの発症にも関与することがわかってきました。
2025.3月に日本小児科学会が乳児のビタミンD欠乏の現状や予防についての提言を報告しています。それによると近年生活・食生活習慣の変化によりビタミンD欠乏の乳児が増加傾向にあり、
0~5か月の乳児で52%がビタミンD欠乏にあるとの報告が紹介されています。
また妊婦の多くがビタミンD欠乏していることもその要因であり、妊娠前、妊娠中のビタミンD充足の重要性も述べられています。
提言を要約すると以下の通りです。
- 胎児のビタミンD欠乏を予防するために、妊婦だけでなく、将来を見据え小児期・青年期からのビタミンDを充足させるような生活・食事習慣を確立する必要がある。
- 母乳のビタミンD含有量は少ないが、ビタミンD補充の目的で母乳栄養が妨げられないようにする。
- 適度の外気浴、外遊びを行い、紫外線防止のため過度の日焼け止めの使用を行わない。
- 補完食(離乳食)の開始を遅らせないようにする。
- ビタミンDだけでなく、カルシウムの適正な摂取を行う。
- 生活環境・食事環境の改善が難しい場合には、ビタミンDのサプリメント接種を考慮する。
食事面での注意
- 乳児のビタミンD接種の目安は5μg (200単位)です。
- 離乳食が始まったらビタミンDの多い魚類(鮭)、卵黄等しっかりあげましょう。
- お母さんもしっかりビタミンDを接種しましょう。1日の目安は10μg(400単位)です。
鮭15g:ビタミンD5μg、
卵黄1個:2.5μg
しらす干し(半乾燥)10g 6.1μg
しいたけ(乾燥)2個(60g) 1μg - 食事での摂取はなかなか困難なことも多く、当院では完全母乳栄養のお子様には赤ちゃん用ビタミンDのサプリメントでの補充をお勧めしています。
現在日本製品で使用できる製品は以下の製品です。薬局やネットでお求めいただけます。
BabyD200 (森下仁丹)1日1滴 90回分で1500円前後です。 http://babyd.jintan.jp
日光浴について
- 適度な外気浴、外遊びが必要です。生後間もなくでも数分程度の外気浴、生後1か月頃から15分程度の日光浴がおすすめです。
直射日光を避ける配慮は必要ですが、過度な日焼け止めやガラス越しの日光浴では外線を遮り効果がなくなってしまい注意が必要です。
参考文献
日本小児医療保健協議会栄養委員会報告
乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言
www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250324_bitamin_D_teigen.pdf